一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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松茸について

質問者:   中学生   takuya
登録番号1801   登録日:2008-10-02
家の庭に赤松があるのですが、どうすれば松茸ができますか?
庭にある赤松では無理なのですか?
takuya君

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。頂いたご質問の回答を樹木とキノコの関係についてのご研究をなさっておられる、東京大学の宝月岱造先生にお願いいたしましたところ、以下のような、詳しいご回答をお寄せ下さいました。しっかり勉強して下さい。


宝月先生のご回答
まず、松林に松茸ができるまでを簡単におさらいしてみましょう。松茸を作る松茸菌は、担子菌というキノコをつくる菌類の仲間ですが、その中でも菌根菌といって、樹木の根に共生して生活するタイプの菌類です。松茸菌は、マツの細根に入り込んで菌根と呼ばれる構造を作りますが、その菌根の中でマツが光合成で作った養分の一部を受け取り成長のための栄養にしています。ですから、松茸菌が成長して松茸ができるには、まず松茸菌がマツの根と共生して菌根を作ることが必要です。菌根ができると、そこから松茸菌の菌糸が土の中へと伸びていきます。松茸菌の場合は、土の中に菌糸がびっしりと増えて、シロと呼ばれる菌糸の固まりを作ります。そして、立派なシロが出来ると、その上に松茸のキノコが出てくることになります。シロの菌糸は、周辺のマツの根に次々と新しい菌根を作って同心円状に広がっていきます。シロの真ん中の菌糸は古くなるとだんだん死んでいくので、結局シロはリング状に少しずつ広がっていくことが多いようです。ですから、松茸が採れる松林に行くと、リング状に発生している松茸をよく目にします。欧米では、こういうキノコの輪を「妖精の輪(フェアリーリング)」と言っているようです。
「松茸を沢山作って儲けたい」と思う人は多いようで、これまでにも沢山の人が色々な松茸作りの方法を松林で試しています。胞子を播いたり、松茸を刻んで土に混ぜ込んだりした人もいましたが、残念ながら、シロはもちろん菌根すら出来ないことが多く、今のところ、すでに松茸が採れている松林をきちんと手入れすること以外、これという方法は無いようです。

さて、「庭の赤松に松茸はできないか」というご質問ですが、そもそも普通の庭の赤松に松茸菌が共生していることはまずありません。したがって答えは、一生懸命に庭の手入れをしたとしても「無理」です。とはいえ松林では松茸が生えるのですから、「絶対に不可能」なわけではありません。ぜひ奇想天外な方法を考え出してみて下さい。

宝月 岱造(東京大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2008-10-22
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